高齢者におけるパワープレートの効果
こんにちは、藤野です。
先日、新聞の記事に目を通している時に、このままの推移で行けば2050年までに日本人の2.5人に一人が65歳以上の超高齢社会になるという記事を目にしました。
超高齢社会になり、高齢者となっても活発に元気よく過ごすためには、ある程度の身体的な能力が必要となるのではないでしょうか。
この身体的な能力の中でも、特に階段の上り下りや、起き上がったりなどの日常生活を苦労なく行う為には筋力と筋パワーが重要となってきます。
これら能力は、ウェイトトレーニングやプライオメトリクスによって向上する事が明らかになっています(Ahtianen et al, 2005; Fatouros et al, 2000)。
しかしウェイトトレーニングやプライオメトリクスを通してパワーや筋力向上を目指す場合、高強度、多量で行わなければ理想的な効果が得られない場合もあります。
上記の理由により、パワー、筋力向上を望む低体力者や高齢者はウェイトトレーニングやプライオメトリクスを避ける傾向にあります。
ホールボディバイブレーション(WBV)は近年考案された、パワープレート(Figure1)という器具を用いて行われるトレーニングで、振動により筋肉が刺激され神経筋機構のエクササイズになるとされています(Cardinale & Bosco, 2003)。
パワープレートを用いて行うエクササイズは比較的強度が低い為、高齢者や低体力者なども比較的取り組みやすいエクササイズであるとされています。
パワープレートは周波数、振幅、時間の設定を行い、実施するトレーニングですが、過去に行われた実験では周波数25-50Hz、振幅2-10mm、そして時間30秒-10分に設定して行われているようです。
では上記の様に数値を設定し、高齢者を対象に行われた研究ではどの様な結果が得られたのでしょうか。
l 骨密度
骨密度は老化とともに減少し、骨密度の減少が著しい場合は、骨粗鬆症の様な症状がみられることもあります。
6か月-12か月間、パワープレートを用いてトレーニングを行った場合、骨密度の増加が確認されるという結果が明らかになっているようです(Merriman & Jackson, 2009)。
l 筋パフォーマンス
加齢と共に、筋力および筋パワーが減少するということは、さまざまな文献により報告されています。
クオリティ・オブ・ライフを高め、より良い生活を実現するためにも、筋力、筋パワーは必要不可欠です。
過去に行われた実験を、まとめたものを見てみると、パワープレートを用いてトレーニングを行った場合でも、フリーウェイトを用いてエクササイズを用いてトレーニングを行った場合でも、似たような筋力および筋パワーの増加がみられるようです(Merriman & Jackson, 2009)。
しかしながら、パワープレートを用いた方が、より効率よく、短時間に効果を得られるという結果も報告されています(Merriman & Jackson, 2009)。
l バランス、柔軟性
バランスおよび柔軟性もまた健康的な生活を送る為に重要な要素になります。
バランスと柔軟性に焦点を当て行われた実験の多くは、パワープレートを用いて行ったエクササイズにより、これら能力の向上が認められたと報告していますが、実験の数が少ないことや、効果が見られなかったという報告もあるという点を考えると、未だ結論は出せない状態の様です。
パワープレートを用いた科学的な実験の数は多くなく、また行われている実験も結果が安定して得られているわけではないようです。
しかしながら、骨密度や筋パフォーマンスにおける向上は、期待できそうです。
また比較的、短時間また低強度でフリーウェイトと同様のトレーニング効果が期待できることを考えると利用価値は大いにあるように感じます。
パワープレートを用いてエクササイズを行う場合、周波数などの数値の設定は、個人によって変化させる必要があるようなので、パワープレートに関するしっかりとした知識のある方と一緒に行うのが良いのではないでしょうか。
(Figure1,パワープレート)
References
Ahtianen, J. P., Pakarinen, A., Alen, M., Kraemer, W. J., & Hakkinen, K. (2005). Short vs long rest period between the sets in hypertrophic resistance training: influence on muscle strength, size, and hormonal adaptations in trained men. J Strength Cond Res 19: 572–582
Cardinale, M., & Bosco, C.(2003). The use of vibration as an exercise intervention. Exerc Sports Sci Rev 31: 3–7.
Fatouros, I. G., Jamurtas, A. Z., & Leontsini, D. (2000). Evaluation of plyometric exercise training, weight training, and their combination on vertical jumping performance and leg strength. J Strength Cond Res 14: 470–476.
Merriman, H., & Jackson, K. (2009). The effects of whole-body vibration training in aging adults: a systematic review. Journal of Geriatric Physical Therapy 32(3): 134-145..