ドローインとブレイシング

ドローインとブレイシング

アスリート、フィットネス、アンチエイジングなど分野問わず、トレーニングをより安全で効果的なものにするためには、正しい姿勢と動作でエクササイズを実施することが大切です。

 

正しい姿勢と動作のコントロールには、

 

「コア(体幹)=Lumbo-Pelvic Complex(腰椎−骨盤複合体)の安定性」

 

が必要不可欠なこともトレーナー、セラピストの共通認識となっています。

 

このコアを安定させるための基本エクササイズの代表的なものとして、

ドローインとブレイシングと呼ばれる2つのエクササイズがあります。

 

今回はこれらの違いについてまとめてみました。

 

<ドローイン:Draw-in>

 

・腹式呼吸を用いて下腹部を凹ませる運動。

・主に腹横筋を活動させることが目的です。

・ホローイング:Harrowingと呼ばれることもある。

 

<ブレイシング:Bracing>

 

・ドローインによる腹横筋に加えて、

外腹斜筋、内腹斜筋、意識的に収縮させる運動。

 

 

腹横筋がコアの安定性において大きな役割を果たすということは明らかなようです。

 

また腹横筋は脊柱を支えるコルセットの様な役割を担っており、弱体化した腹横筋は腰痛の原因となるため、ドローインは臨床現場で腰痛対策のエクササイズととして用いられているようです。

 

しかし幾つかの実験によると、コアを安定させる目的においては、ドローインよりもブレーシングの方が効果的であるということも明らかになっています。

 

さらにドローインにおいて、腹横筋のみを刺激するのはほぼ不可能であり、ドローイン自体が、ある軽度のブレイシングになるのではないかと推測し、コーチおよびセラピストはドローインよりもブレイシングを行うべきであると主張している専門家や研究者もいます。

 

以上を踏まえると、

 

ドローイン:

 

極端に腹横筋が弱化している場合やブレイシングの導入段階に実施する。

 

ブレイシング:

 

ドローインによる腹横筋の収縮が意識的に行える前提で、

より高強度や複雑な運動への準備として、またはそれらの運動中に実行する。

 

つまり、

 

ドローイン=リコンディショニング

 

ブレイシング=パフォーマンスアップ

 

という構図になりますが、

 

実際にはトレーニーのコンディションや、実施する運動強度によって、必要なエクササイズとコアを安定させるテクニックも変わってくるということではないでしょうか。

 

特に競技アスリートには偏ったパターンオーバーロードや局所オーバーユースによる、

相反抑制により腹横筋のスイッチがオフになっている場合も少なくなく、

その場合はドローインエクササイズによる腹横筋の活性化によってコンディションとパフォーマンスが回復する場合もみうけられます。

 

当たり前の事ですが、エクササイズはそれぞれの目的と効果を理解して、必要に応じて使い分けることが重要です。

 

 

References

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TM.

2012年03月08日