スレッド・トレーニング

スレッド・トレーニング

今回はスレッド・トレーニングについて紹介します。

スレッド・トレーニングは、ソリを負荷として行うレジスタンストレーニングで、アメリカンフットボール、ラグビー、アイスホッケーなどのS&Cプログラムでよく見かけられます。

具体的にはウェイトプレート等をのせたソリを直接、またはアタッチメント(ハーネス、ロープ、ハンドル等)により押したり、引いたりするものですが、
その様式、強度、量の設定によって、様々な効果が期待できるようです。

スレッド・トレーニングの特徴と効果をまとめると、

・ スポーツ・スペシフィック
ホリゾンタル(水平方向)、グランドベース(地面に踏ん張った状態)、ユニラテラル(片側交互)、ノンリニア(非直線的、3次元的)な筋力、パワー発揮が求められるため一般的なレジスタンストレーニングに比べてより競技動作に特異的で、機能的なトレーニングが可能になる。

・ コンセントリック・ベース
殆どのエクササイズがコンセントリック・コントラクション(短縮性筋収縮)が中心となり、筋ダメージの主因であるエキセントリック・コントラクション(伸張性筋収縮)を含まない動作になるため筋肉痛、筋ダメージ、炎症などの反応を最小限に押さえることができる。そのため筋肥大にはベストな様式とはいえないが、それでも筋力向上には十分な効果が期待できる。

・ スターティング・ストレングス
慣性の法則により、動作のはじめに大きな筋力発揮が求められる。これは筋の弾性力(伸張反射)を利用できないスプリンターのブロックスタート、アメリカンフットボールのラインメンのイニシャルブロック、ラグビーのフォワードのスクラムエンゲージなど静止状態からの筋力発揮に適したトレーニングとなりえる。

・ エクスプロッシブ・ストレングス
基本的にはコンセントリック・ベースのエクササイズであるが、予備動作による伸張反射を意識的に行うことで、爆発的筋力発揮を目的としたクリーンプルのようなオリンピックリフティングの代替種目としての効果も期待できる。

・ スピード・ストレングス
特にアクセラレーション(加速)パワーを高めるレジスティッド・スプリントの負荷として利用できる。その場合正しいランニング動作が維持でき、スピードに10%以上の低下がみられない負荷を選択することが重要になる。

・ スピード/パワー・エンデュランス
高強度短時間の筋力発揮を繰り返し求められる持久力を高めることが可能である。

・ エンデュランス
筋持久力、心肺機能などの全身持久力を高めるためのインターバル、レペテショントレーニングとして利用できる。

・ ハイパートロフィー
エキセントリック・コントラクション(伸張性筋収縮)が含まれないので、ベストな様式ではないが、筋肥大を目的としたレジスタンストレーニングの代替種目として利用できる。

・ バリエーション
チェストプレス、ロウイング、リアレイズなど一般的なレジスタンストレーニングの代替種目として利用できる。特にシーズン中にS&Cセッションの時間が確保できない場合の補強運動として有効といえる。

・ アスレティック・リハビリテーション
後ろ向きにソリを引く等、クローズドキネティック(地面に踏ん張った状態)での膝、股関節伸展などアスレティック・リハビリテーションのプログラムの一環に含めることが可能である。

以上のように、競技特異的で機能的なトレーニングであるばかりでなく、強度や量を調整することでオフシーズン、プレシーズン、インシーズン通じて幅広く活用できるトレーニング様式であるといえます。

Reference:
Strength & Conditioning Journal:
April 2012 – Volume 34 – Issue 2 – p 1–7
Implement Training for Concentric-Based Muscle Actions.

2012年10月19日