ウェイトリフティングにおけるLTAD(長期育成)プログラム

ウェイトリフティングにおけるLTAD(長期育成)プログラム

バイタルストレングススタッフブログ更新

こんにちは藤野です。

ウェイトリフティングは、様々なレベルのアスリートにおける筋力、パワーおよびスピードを向上させる手段として用いられてきました。

ウェイトリフティングとは、スナッチとクリーン&ジャークからなる動作のことを指します。

ユース年代におけるウェイトリフティングの導入は、安全面などを考慮すると控えるべきだと過去には述べられてきましたが、ウェイトリフティングにおける傷害の発生率は極めて低いということが近年の研究により明らかになりました(Byrd et al., 2003; Faigenbaum et al., 2007; Faigenbaum et al., 2008)。

ウェイトリフティングを含むレジスタンストレーニングに多少のリスクがあるということは確かですが、適切な資格保持者の下で行われるトレーニングはユースに対しても、安全であり、効果的であるとされています(Baker et al., 2011; Faigenbaum et al., 2009)。

ユースに対し、効果的かつ安全にウェイトリフティングを身につける為にも、Long Term Athlete Development Model(LTAD)に沿って、小さい頃から、その時期の成長に合わせたトレーニングを行うことが勧められています。

そこで今回はLloydら(2012)によって示されているユースに対するウェイトリフティング指導法を紹介したいと思います。

l Long term athlete development and weightlifting for youths
LTADとは、いくつかの学習ステージに分け、幼少期から計画的に一貫して指導を行う方法のことです。

思春期前(FUNDAMENTALS and LEARNING TO TRAIIN)
このステージは6-8歳、および10-12歳の時期を指し、歩く、走る、飛ぶなどのFundamental Movement Skillsを習得するとともに、キャッチング、ホッピング、ギャロッピングなどのFundamental Sport Skillsを学ぶことで、後の動作習得がスムーズになります。

思春期(TRAINING TO TRAIN)
子どもの身長が一番伸びている時期が、このステージに当たります。
このステージでは、身体の形(手足の長さなど)が大きく変わることから、今まで習得していたテクニックが大きく崩れる可能性があるので、ストレングスコーチも注意しなければなりません。

思春期後(TRAINING TO COMPETE and TRAINING TO WIN)
このステージは身長が一番伸びていた時期から12-18カ月後の時期を指し、子供の体重も急激に伸び、ホルモンの分泌も多くなります。
ホルモンの分泌が増加することから、筋肉も徐々に増加していく時期です。

またLloydらの文献ではLTADに沿った、ユースに対するウェイトリフティングの段階的指導法も紹介されています(図1)。

l Coaching weightlifting progressions to young athletes

Stage1: Fundamental weightlifting skills(Males 6-9 years, Females 6-8 years)
このステージでは、ウェイトリフティングに必要なアジリティ、バランス、コーディネーションを育む時期ですが、すべてのエクササイズがウェイトリフティングに関係している必要はありません。

例えば、体操、木登りなどのFUN(楽しさ)を重視しつつ、自分の体重をコントロールするようなアクティビティも非常に良いとされています。

上記の様なエクササイズを通じて、ストレングス&コンディショニングコーチは3関節のエクステンション、肩甲骨の安定性、そしてコアストレングスの獲得を子ども達に促す必要があります(図2)。

Stage2: Learning weightlifting(Males 9-12 years, Females 8-11 years)
このステージから段階的にエクササイズを習得していきます(図3)。
この時期の子どもは自然と、これらテクニックを素早く習得していきますが、簡単に重量を増加させたりしてはいけません。

Stage3: Training weightlifting(Males 12-16 years, Females 11-15 years)
この時期のアスリートは急激な成長を向かえ、手足が長くなります。
これが原因により一時的なコーディネーションの低下が見られます。
このステージより徐々に重量を増加させていきますが、テクニックを重視し、選手の安全を第一に考え、あまり無理をさせてはいけません。

Stage4: Performance weightlifting (Males 16+ years, Females 15+ years)
この最後のステージでは、挙上重量とテクニック両方を重視します。
またバーの速度やパワー値を測定する為の装置を用いることも推奨されています。

Lloydらは各ステージにおける、理想的なボリュームや強度、頻度なども提示しています(図4)。

以上がLloydらが推奨するユースに対するウェイトリフティング指導法の概要です。

ウェイトリフティングはアスレチックパフォーマンスを向上させる為にも効果的なエクササイズの一つであることから、ウェイトリフターのみならず様々なアスリートに導入しても良いのではないでしょうか。

ウェイトリフティングは複雑な動作を含む、習得が難しいエクササイズですが、有資格者の下で、上記の様に幼少期より少しずつ計画的かつ効果的なプログラムを導入することで、安全に、そして計画的にエクササイズの習得が可能になりそうですね。

References
Baker D, Mitchell J, Boyle D, Currell S, Wilson G, Bird SP, O’Connor D, and Jones J. Resistance training for children and youth: A position stand from the Australian Strength and Conditioning Association (ASCA). 2007. Available at www.strengthandconditioning.org. Accessed: July 13, 2011.

Byrd R, Pierce K, Reilly L, and Brady J. Young weightlifters’ performance across time. Sports Biomech 2: 133–140, 2003. Byrd R, Pierce K, Reilly L, and Brady J. Young weightlifters’ performance across time. Sports Biomech 2: 133–140, 2003.

Faigenbaum AD, Kraemer WJ, Blimkie CJ, Jeffreys I, Micheli LJ, Nitka M, and Rowland TW. Youth resistance training: Updated position statement paper from the National Strength and Conditioning Association.
J Strength Cond Res 23: S60–S79, 2009.

Faigenbaum AD and McFarland J. Relative safety of weightlifting movements for youth. Strength Cond J 30: 23–25, 2008.

Faigenbaum AD, McFarland JE, Johnson L, Kang J, Bloom J, Ratamess NR, and Hoffman J. Preliminary evaluation of an after-school resistance training program for improving physical fitness in middle school- age boys. Percept Mot Skills 104: 407–415, 2007.

Lloyd SR, Oliver LJ, Meyers WR, Moody AJ, and Stone HM. Long-Term athletic development and its application to youth weightlifting. Strength and Conditioning Journal 34(4): 55-66, 2012..

2012年10月12日