【活動報告】IRB(国際ラグビーボード)S&C Level2

【活動報告】IRB(国際ラグビーボード)S&C Level2

こんにちは。坂井裕介です。
 2013年10月14日〜18日にシンガポールで開催された、IRB Level 2 S&C Courseに参加してきました。
 IRBは世界のラグビー競技を統括する組織であり、活動のひとつに良いラグビー指導者を育成するための「Training and Education Courses」があります。Strength & Conditioning Courseもその中の1つであり、定期的に世界中で開講されています。この S&C Courseは、Level 1とLevel 2が設けられており、Level 1の認定を受けた後にLevel 2 (4日間の講習会)を受講できるシステムになっています。各レベルともに受講後に審査を受け、合格すれば、その資格が認定されます。
 私は、今回アジアで初めて開催されたこの講習会に日本人として初めて参加しましたので、紹介したいと思います。
 上記にもあるように4日間のスケジュールで、最終日以外は9時スタートの17時終了で、時間いっぱい講義、実技を行う非常にタイトなスケジュールでした。期間中は休憩時間も他国の参加者と意見交換を行うことが多く、非常に有意義な4日間でした。

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受講した内容は、大きく7つに分けられており、4日間での座学、実技を終えた後、プランニングをプレゼンテーションし、プログラムしたものを現地の選手に指導するという流れで進められました。なお、講習内容は、以下の通りです。

1. Functional Assessment / Anatomical Adaptation
 Functional Assessmentでオーバーヘッドスクワット、プランク、シングルレッグバランスの試技を評価し、今回のセッションでのAnatomical Adaptationは試技から得られた修正点を矯正する為の実技を行いました。

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2. Fundamental Movement Skills
 しゃがむ、走る、投げる、コンタクトするといったラグビーの競技動作に関連する基本ドリルの実習、指導を行い、プログラムを作成し、シンガポール7人制女子中学生チームへ指導しました。

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3. Speed
Aドリル、ウォールドリルを中心に、リニア、ラテラルのスピードドリル (アジリティを含む) の実習を行い、リニア→ラテラル→アクセラレーション→ディセラレーション→チェンジオブディレクションの順で実技を行い、男子体育大学生に指導しました。

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4. Periodisation
Loading, Unloadingを中心に、ミクロサイクル内でのプログラミングについてディスカッションしました。私が携わっているU20日本代表、7人制シンガポール代表のプログラムを題材にコーチ間での意見交換を行いました。

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5. Conditioning
 ラグビー特有なコンディショニングについてディスカッションしました。
 コンタクト局面の為のコンバットコンディショニング、タックル後のダウン&アップ、ボール保持の為のグリップコンディショニング等の意見交換を行い、全ての要素を取り入れたインテグレーティッドコンディショニングのプログラミングを行いました。

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6. Strength & Power
 ミクロサイクル内での細かい強度設定について意見交換し、主に筋肥大期に用いる重量についてディスカッションしました。

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7. Olympic Lifting
 私が講師となり、クリーン動作の1st pull、Scoop、2nd pull の指導実習をしました。1st pullからScoopにかけての動作の反復練習を多く行い、各個人の動作を全員でチェックしながらディスカッションしました。

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今回の研修では、新しい情報の紹介というよりは、コーチングの方法についてディスカッションする機会が多く設けられ、選手の動作を細かく見る目と、それを即時に的確にフィードバックすることの重要性を再認識することができました。
 海外のトレーニング指導者の多くはスクリーニングを重要視している印象を受け、フリーウエイトを用いたストレングストレーニングの為に数年単位の長期的な準備をしていることがわかりました。中学時には本格的にストレングストレーニングに取り組めるよう準備されているようです。
 シンガポールは日本と比べ、ラグビー新興国ではあるが、プッシュアップ、スクワットといった自体重トレーニングのフォームが中学時には既に教育されていました。日本の小中学校にS&Cコーチがいること自体が稀で、教育者との情報共有や講習会等の機会が設けられることが、日本の課題である身体的能力の差を埋めることに繋がることが期待されます。
 今回のように他国の代表クラスのコーチと交流できることは少なく、自身のコーチングを評価されるチャンスも少ないので、このような場への積極的な参加は日本のコーチ育成に良い影響を与えると感じました。
 尚、今回の研修について、2013年12月14日に開催された第2回トレーニング指導学会の国際情報部門として発表させていただきました。

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2013年12月24日