筋力トレーニングの心理面への効果

筋力トレーニングの心理面への効果

こんにちは藤野です。

 

適切なレジスタンストレーニングや有酸素トレーニングを行うことで、筋力および持久力の向上、筋肥大が起こることは一般的に知られています。

 

それだけではなく、トレーニングには関節炎や糖尿病、筋機能に良い影響を与えることが明らかになっています。

 

近年では、トレーニングが与える生理的な側面のみでなく、心理的な側面にも注目が集まっています。

 

有酸素トレーニングが精神的に与える効果として最も知られているものの一つに状態不安の軽減があります。緊張や心配といった感情は状態不安と深く関係しており、状態不安が改善することで、これらの感情も改善するとされています(Morgan, 1985)。

 

また過去にEkkekakisら(2005)が行った実験では、有酸素トレーニングによってストレスが軽減されたり、精神的な気分が向上するということが証明されました。

 

レジスタンストレーニングと心理状態を検証した実験では、高強度レジスタンストレーニング(70-80%1RM)を行うことで状態不安が増大する(精神的に負の影響を与える)とされています(Raglin et al., 1993)が低強度や70%1RM以下でのレジスタンストレーニングであれば、むしろ状態不安の改善になるという報告(Arent et al., 2005; Bartholomew, 1999)もされており一貫した見解は未だ得られていないようです。

 

これら心理的なトレーニング効果は、高齢者にもみられ、人生に対する満足度や、気分状態にポジティブな影響を与え、結果としてクオリティオブライフの向上に繋がるとされています(Blumenthal et al., 1989)。

 

以上の気分や、ストレス解消のみならず、自己効力感もレジスタンストレーニングや有酸素トレーニングによって向上することが明らかになっています(Singh et al., 1997)。

 

自己効力感とは、自己に対する有能感や信頼感のことを指し、「できる」という感覚や自信とも繋がるものであるとされています。

 

このトレーニングによる自己効力感の向上は全年齢においてみられ、強度が高い方が向上の幅が大きくなるとされています(Tsutumi et al.,1997)。

 

以上をまとめると、現在明らかになっているトレーニングが精神的側面に与える効果は、

l  気分の向上

l  ストレス発散

l  状態不安の改善

l  高齢者におけるクオリティオブライフの向上

l  自己効力感の向上(有能感や自信)

が挙げられるようです。

 

Kraemarは「トレーニングロードを変化させることで、それによって得られるトレーニング効果も大きく変化する。」と述べていますが、心理的に与える効果についても同様であると考えられます。

 

状態不安に関しては、多くの研究者によってトレーニングロードとの関連性が検証されていますが、その他の心理的状態とトレーニングロードに関しては未だ検証が十分とは言えない状況のようです。

 

問題点は未だ多くあるものの、トレーニングには心理的に良い影響を与えるポテンシャルがあるというは確かであり、身体的、心理的健康を促す良いツールではないでしょうか。

 

トレーニングを積むことで、心理的にも健康でありたいですね。

 

 

References

 

Arent, S. M., et al.(2005). Dose-response and mechanistic issues in the resistance training and affect relationship. Journal of Sport and Exercise Psychology, 27, 92-110.

 

Bartholomew, J. B. (1999). The effect of resistance exercise on manipulated preexercise mood state for male exercisers. Journal of Sport and Exercise Psychology, 21, 39-51.

 

Ekkekakis, P., et al. (2005). Variation and homogeneity in affective responses to physical activity of varying intensities. Journal of Sport Science, 23, 477-500.

 

Morgan, W. P. (1985). Affective beneficence of vigorous physical activity. Medicine and Science in Sports and Exercise, 17, 94-100.

 

Raglin, J. S. (1997). Anxiolytic effects of physical activity. In W. P. Morgan, Physical activity and mental health. Washington, DC: Taylor & Francis.

 

Singh, N. A., et al. (1997). A randomized controlled trial of progressive resistance training in depressed elders. The Journal of Gerontology Series A: Biological sciences and Medical Sciences, 52, M27-M35.

 

Tsutsumi, T., et al. (1997). Physical fitness and psychological benefits of strength training in community dwelling older adults. Applies Human Science, 16, 257-266..

2012年06月28日