早稲田大学アメフト部S&C一貫指導
こんにちは
バイタルストレングスの藤野です。
現在、私は早稲田大学アメリカンフットボール部、早稲田大学高等学院アメリカンフットボール部、早稲田実業高等学校アメリカンフットボール部でストレングス&コンディショニング(S&C)コーチとして活動しています。
上記の2校の高校を卒業し、大学でもアメリカンフットボールを継続する選手は高校から含めて7年間の一貫指導を行うことが可能となっています。
今回は私が一貫指導を行う中での取り組みをご紹介させて頂きたいと思います。
- 高校生
15歳から18歳までの高校生の時期は最大発育速度(Peak Height Velocity)を迎え、長期的アスリート育成モデル(Long Term Athlete Development:LTAD)(図1,図2参照)ではTrain to TrainやTrain to Competeの時期になります。
この時期では、アスリートになるための土台を作り、心肺機能、柔軟性、スピードを高めるのに最適な時期であるとも言われています。
高校生を対象にトレーニング指導を行う際は、これらの点を踏まえ、入学したばかりの高校1年生にはまず自重でのスクワット、プッシュアップ、そして懸垂をしっかりとしたフォームで実施できるように指導しています。
その後高校2年生、3年生になると、フロントスクワットやベンチプレスなどのベーシックなトレーニングを中心に実施するようにしています。また大学生になりオリンピックリフトのクリーンを実施することを踏まえRDLやフロントプレスのような将来的にクリーンをマスターするのに効果的であるとされるトレーニングも行っています。
特に注意している点として、すべてのトレーニングを適切なフォームで、大きく動かし実施するようにしています。上記のLTADでも述べましたが、この時期は柔軟性を獲得するのに最適であるということもあり、適切なフォームで関節角度を大きく使いトレーニングを行うことで柔軟性の獲得と同時に筋力の強化にも繋がると考えています。
- 大学生
大学生になると身体もほぼ大人と変化がなくなりLTADモデルのTrain to CompeteもしくはTrain to Winの段階になります。
この段階では、試合で勝つために必要な要素を可能な限り向上させていくことに焦点を当てます。
大学生になるとオリンピックリフトであるクリーンの習得からはじまります。高校生の時は、トレーニングする時の人数が100名を超える時もあり、人が多く存在している環境でのクリーンは危険になると考え実施していませんでした。しかしながら大学生になると、入学してすぐにフロントスクワット、RDL、ハイプル、クリーンシュラッグなどを実施し、徐々にクリーンを習得していくようにしています。
クリーンの他は高校生と同様にベーシックなトレーニングを広い可動域を用いて適切なフォームを保ったまま実施できるように指導しています。
その中で徐々に挙上重量を確保できるように実施しています。
- 現場での問題点
高校生は一度にアスリートがトレーニングを行うことが通常であり、そうなるとトレーニング場に50名近いアメリカンフットボール部の選手が一緒にトレーニングを行います。そのような場合でのトレーニング指導は安全確保が第一になり、トレーニングの指導に集中できない時もあります。
そのような問題の改善するために高校生にはペア同士でのコーチング(ペアティーチング)を積極的に用いるようにしています。
学校現場でもよく用いられる手法ですが、アスリート同士の関係性も向上しチームの環境に良い影響を与えるのではないかと考えています。
大学生になり、今までウェイトトレーニングを高校のときから実施していたアスリートが大学からウェイトトレーニングを始めるアスリートと一緒になる場合、ウェイトトレーニングに慣れているアスリートがそうでないアスリートに対し、挙上重量などで無理をさせる傾向があります。
正しいフォームで実施できていないのに、無理なフォームで挙上するような場面もみられ、そういった場面でのコントロールが非常に難しいように感じます。
また大学生になると授業などの関係でバラバラにトレーニング場に現れるアスリートも多く、トレーニング実施状況の管理が難しいこともあります。
簡易にトレーニングの記録を参照するために、Google Formを用いて挙上重量の報告をアスリートに実施するようにしてもらっています。
このGoogle Formはトレーニングデータのみでなくコンディション管理などにも使用しています。
- 一貫指導の成果
私が最初に指導した高校1年生が現在、大学4年生になり、多くの高校から指導してきたアスリートが試合でも中心になって活躍しています。
一貫指導を通して、トレーニングを行ってきたアスリートは、そうでないアスリートと比較し、正しいフォームで関節可動域を大きく使用し、より重い重量を挙上で来ているように感じます。
また、ウェイトトレーニングでの怪我もなく、順調に挙上重量を向上させることができているアスリートがほとんどであると感じています。
これまで高校生から大学生までの指導を実施してきましたが、ベーシックなエクササイズを適切なフォームで指導できることの難しさを感じます。個人によって硬い部分などがあり、正しい姿勢を保つことができなかったり、クリーンの際の身体の動かし方を理解するのに時間がかかるアスリートなど、個人によって特徴が大きく異なります。チームに帯同し、すべてのアスリートに適切なフォームでベーシックなエクササイズを指導するのは、大変難しいことであると実感するとともに、柔軟性の獲得や、その獲得した柔軟性での筋力の向上などを行うには地道にこれらのエクササイズを高重量で実施できるのが良いのではないかとも思っています。
今後も、アスリートが適切なフォームでトレーニングが実施できるよう指導を続けていければと思います。
藤野
図1,LTADモデル
図2,LTADモデル