専修大学ラグビー部S&Cプログラム(上半身)
こんにちは。坂井です。
前回に引き続き専修大学ラグビー部のS&Cプログラムを紹介します。
今回の上半身プログラムですが、ベースは前回紹介した下肢プログラム同様、BIG3であるベンチプレスは高重量・低回数プログラムを実施しています。
週4日のストレングスセッションのうち2日間を上半身のプログラムに充てているのですが器具と時間の関係上、下肢プログラムのように一部位に対して多くの種目を取り入れることができません。
そこでBIG3のベンチプレスの数値を伸ばす為にどのようなプログラムを導入すべきなのか?
前回紹介した強縮後増強作用の他に「成長ホルモン」にスポットを当てることにしました。
成長ホルモンについては様々な研究がされており、未解決な疑問が多く残るものの骨格筋やその他の身体組織の成長過程に深く関与しているといわれています。
生理的役割として、①グリコーゲン合成の低下、②細胞膜を隔てたアミノ酸輸送の上昇、③タンパク合成の増加、④脂肪酸利用の増加、⑤コラーゲン合成の増加、⑥軟骨成長の刺激等が挙げられます。
では成長ホルモンの分泌にはどのようなストレングストレーニングが必要になってくるのでしょうか?
Klaemer(1990、1991)によると総仕事量の多い短い休息時間のプログラムの方が、高強度・低レップで休息時間の長いプログラムに比べ22kD成長ホルモンの急性応答に対し、より大きな影響を及ぼすと考えられています。
また、ある閾値以上のトレーニング量および強度のレジスタンストレーニングが血中成長ホルモン濃度を上昇させると報告があり(Vanhelder.1984)、血中乳酸濃度と血清成長ホルモン濃度に高い相関が認められていることから(Hakkinenら.1993)、Day2のプログラムでは高強度(5RMを使用)の最終セットにマルチパウンデージシステムを5set追加し、ボリュームを上げることにしました。
マルチパウンデージシステムとは、4〜5RMの負荷で4〜5レップ実施した後、すぐに重量を減らし4〜5レップを行い、それを繰り返し行う方法です。
このシステムのメリットは、血管増生を促進し短時間でハイボリュームなトレーニングが実施できることです。
また連続して数セット実施する為、乳酸濃度が上昇し局所筋持久力の向上にも優れているといわれています。
これは個人的な意見ですが、マルチパウンデージシステムはかなりキツイので根性もつきますし、実施中かなり盛り上がる傾向があります(笑)
プログラムは以下の通りです。
(Day2)
・ ベンチプレス 10/60% 5/70%/1/90% 5/87% 5/87% 5/87% 5/87%+マルチパウンデージtotal 5set
・ プッシュアップ total 100
・ ショルダープレス 10/8/6/6/6
・ ワンハンドログプレス 10/8/6/6/6
・ 3wayデルトレイズ 10×4
・ ベントオーバーロウ 10/8/6/6/6
・ コア4種目
・ チンニング total 50(自由参加)
Day2のプログラムでは胸、肩が中心となっており、プル系種目はDay4が中心となっています。
今のトレーニング期に様々な方法を選手に紹介し、キツイトレーニング期のプログラムに興味が尽きないよう指導していけたらと思います。
<参考文献>
Kraemer, W.J, Marchitelli L., Gordon S.E., Harman, E.,
Dziados, J.E., Mello, R., Frykman, P., McCurry, D. and Fleck, S.J. (1990) Hormonal and growth factor responses to heavy-resistance exercise protocols. Journal of Applied Physiology 69, 1442-1450.
Kraemer, W.J, Gopdon S.E., Fleck S.J., Marchitelli, L.J., Mello, R., Dziados, J.E., Friedl, K., Harman, E., Maresh, C. and Fry, A.C. (1991) Endogenous anabolic hormonal and growth factor responses to heavy-resistance exercise males and females.
W.P.Vanhelder , M.W. Radomski , R.C Goode (1984) . Growth hormone responses during intermittent weight lifting exercise in man . European Journal of Applied Physiology 1984 53:31-34
Hakkinen,K.,and Pakarinen,A . 1993 .Muscle strength and serum testosterone , cortisol and SHBG concentrations in middle-aged and elderly men and women . Acta Physiologica Scandinavia 148:199-207.