ラグビーにおけるLTAD(長期選手育成)
こんにちは藤野です。
先行研究によると、アスリートがエリートレベルに達するまで8-12年必要とするということが明らかになっています。この法則は、10年ルールもしくは1万時間ルールとして知られています。
このルールは、適切に計画されたトレーニングを行った場合にのみ適応されるもので、計画性のないコーチの下でトレーニングを行っても、エリートレベルに達することは難しいとされています。
アスリートやチームとして、成功を収めるためにはトレーニングをショートタームで行うのではなく、ロングタームで行う必要があることから、徐々にLong Term Athlete Development model(LTAD)が採用されています。
LTADとは、選手の成長に合わせ、いくつかのステージに分け、幼少期から計画的に一貫して指導を行う方法のことです。
一般的には以下5つのステージに分類されます。
- The FUNdamental stage
- The Training to train stage
- The Training to compete stage
- The Training to win stage
- The retirement/ retraining stage
今回はイギリスのラグビーユニオンで主に用いられているLTADをご紹介したいと思います。
Stage1: FUNdamentals and learning to train
このステージは、主に6-10歳の時期のことを指し、動作の基本的なことを学ぶと同時に、楽しむ(FUN)ということを重視したステージです。
このステージでは、運動競技におけるABCS(アジリティ、バランス、コーディネーション、そしてスピード)および、走る、投げる、そして飛ぶなど基本的な動作を発展させることに焦点を当てるステージです。
またこの時期では、一つの競技のみではなく、ラグビー以外の多くの競技に参加することが推奨されており、ラグビーのスキルに関しては、上記の基本的な動作をマスターした後に行われる方が良いとされています。
この時期の筋力トレーニングは主に、自重やメディシンボールを用いてエクササイズを行い、楽しみながらエクササイズを行えるものが導入されているようです。
Stage2: Training to train
このステージは10-14歳頃におけるステージで、どのようにトレーニングをするのか、そしてラグビーに特化したスキルを学ぶステージでもあります。
このステージでは、選手たちはラグビーの基本的な戦術およびテクニック、ウォームアップ、クールダウン、メンタルトレーニング、栄養学、リカバリー方法、ピーキングの方法など協議に関わる全ての基本事項を学びます。
全体の時間の75%程度をトレーニングに注ぎ、残り25%程度を実際の試合に費やすことが推奨されているようです。
このステージでの成果(基本的なテクニックや戦術の習得およびフィジカル面での向上)が、後々アスリートがどの様に成長していくか、大きく関わってくる期間でもあるそうです。
Stage3: Training to compete
このステージでは、前のステージで獲得した基本的なスキルや戦術をさらに発展させ、さらにフィットネスの向上にも焦点が当てられるステージです。
この時期のトレーニング内容は、上記の様なスキル、戦術、およびフィットネスの向上を目的としたトレーニングが全体の50%、残りの50%を試合形式のトレーニングが占め、より実践に重きをおいた期間になります。
このステージでは、今まで選手が学んできたものを、実際の試合の中で発揮することが求められます。
Stage4: Competing to win
このステージが、アスリートとして最終段階となり、フィジカル、テクニック、メンタルなどすべての要素が確立され、目的がパフォーマンスの最適化になります。
選手は大きい大会にピークを合わせ、トレーニングを行い、トレーニングはハイインテンシティ、ハイボリュームとなります。
また費やされる時間もトレーニングが25%であるのに対し、試合に特化したトレーニング(大会)が75%になります。
以上がイギリスのラグビーユニオンで実際に行われているLTADの概要です。
このLTADはイギリスのみならず、世界各国で積極的に導入されているようで、ラグビーカナダでも、既に導入されているようです。
図1が2011年にラグビーカナダで用いられた、LTADのカリキュラムの概要です。
カナダでは、幼少期から引退後のキャリアも視野に入れ、積極的にサポートが行われているようです。
その国々のスポーツ事情や普及度合いに合わせ、ステージの数や目的など微妙に変化していますが、各ステージの主な目的は、どの国においても共通しているようです。
日本においてもラグビージュニアジャパンが発足されるなど、ラグビー界では若手育成が積極的に行われている様です。
4年後のリオオリンピックで7人制ラグビーがオリンピック正式種目となることが、正式に決まり、ラグビーの世界的な普及に繋がっている様ですが、幼少期からまずは楽しみながら始め、計画的にアスリートとして成長していくLTADを用いた若手育成も貢献しているのではないでしょうか。
References
Balyi, I.(2001).Sport System Building and long-term athlete development in British Columbia.Canada:SportsMed BC.
Dan, B.(2004).A kick start for rugbys future.recreation.
Rugby Canada LTRD implementation curriculum guide. (2011).Rugby Canada..